伝統の継承と新たなきもの文化の創出

伝統の継承

京都には、伝統と格式を重んじる厳格なきもの文化が歴然と存在している。
京都では、茶道や華道の稽古事などと関連して着る機会が多いこと、多く残る行事の際に「ハレ」のきものを着る慣習が色濃いこと、多くの寺社の本山・本社、芸道や芸能の家元など「和」の文化の源泉が存在することから、着る頻度が高い、目の肥えた使い手が一定数あることにより、きちんとした伝統と格式を守ったきもの文化を大切に維持継承している。
こうしたきものの着こなしには、和の文化への深い造詣を必要とするため、難解であるとの声も多い。しかし、翻って、こうしたきものは、身につける人の文化的なステータスを表象する存在となるため、ここぞという場面で着ることのできる、質の高いきものが求められている。
また、グローバル化が進むなか、国内外における、外国の人々と関わる場や国際的な催しで、きものを着る機会が増えている。このような場では、自らのアイデンティティーを表現する日本の美意識の集大成ともいうべき伝統を継承したきものの存在が欠かせない。

新たなきもの文化の創出

その一方で、住まいの様式が和から洋になるなど生活様式が変化し、結婚式など節目の行事に対する考え方が多様化するなか、きものの購入形態の主流も、嫁入り道具など親が子にきものを誂える形から、自分好みのきものを自ら購入する形へと変わってきている。インターネットの普及により、消費者同士の情報交換や交流も盛んになった。
現在、きものの消費全体は落ち込んでいるものの、和の文化に注目が集まるなか、きものブームが起こっており、自分らしく自由にファッションを楽しめる、お洒落着・日常着としてのきものが求められ、結果として、アンティークのきものや浴衣も広く着用されるようになっている。こうした需要においては、伝統や格式にとらわれすぎない、着やすく、手入れが楽で、現代的なセンスにあった色、デザインのきもののニーズが強い。
このような動きは、きものを愛好する人々の裾野を広げる意味で重要であり、きもの文化の中心である京都には、悠久の歴史が育んできた優れた美意識、伝統の神髄を継承しながらも、時代の変化に即し、多様化するニーズに応えて、現代のライフスタイルの中で着る新しいきものや着こなし方の登場など、新たなきもの文化の創出が求められている。

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