きものの魅力
生活様式が変化するなか、着用機会は少なくなったが、きものの美しさや素晴らしさは再評価されている。
きものの魅力は、まず、四季を持つ日本の美意識が表現され、長い歴史の中で磨かれた文様や意匠などが奥深い和の文化を表している点である。
平面的で画一的ともいわれる様式の中に本質の美を際立たせようとするきものの美しさには、日本のこころが感じられる。
きものは、日本人の体型の長所を活かした、日本人に似合う装いでもあり、きものと、帯や小物の組み合わせ次第で趣が変わり、幅広いお洒落が楽しめる魅力も大きい。
男性のきものにおいては、羽裏(はうら)や襦袢(じゅばん)、しゃれ紋など、隠れたお洒落が楽しみの一つである。
高価な印象もあるが、流行が少なく、多少の体型の変化にかかわらず、長く着ることができ、ほどけば一枚の反物に戻り、多様な仕立て直しが可能なため、大切に保管して、世代を越えて子や孫へ受け継がれるものも多い。
きものを着ることで注目されること、周囲の目を楽しませることなども魅力の一つである。
きものを通して磨かれるこころ
きものは、長く着るものであり、親から子へ大切に引き継がれる。そのため、家庭では、きものを着る時には手を洗い、虫がつかないようきっちりと畳んで保管し、季節ごとの虫干しなどに気を配る。破損した場合も、繕ったり、端切れをつなぎ合わせたり、裏地や帯にしたり、工夫して長く愛用した。こうした家庭の営みの中で、ものを大切に扱うことを子どもたちは自然に学んでいった。ものを大切にする心は、現代のエコロジーの精神にも通じる。
きものを着ると、自然と背筋が伸びて、美しい所作が身についてくる。動きが制約されるからこそ、周りに気を配る心遣いが生まれてくる。
京都には、普段はしまつしているが、着るものにこだわり、特別な晴れの日に質のいいきものを着る気風があるが、これは、相手をもてなすために着るという考え方、おもてなしのこころに通じている。
きものの映えるまち
きものの映える日本らしい町並みをきもの姿で歩くことは、非日常を体験することにつながり、観光の楽しみの一つとなる。
きものの映えるまちとして、代表的な観光地である京都では、国内外から訪れる旅行者等がきものや浴衣を着て、祭などの行事に参加したり、社寺等を散策するなどの楽しみ方も定着してきている。