花街には京都の伝統的な風習が伝わるとともに、花街独自の行事が行われ、移り変わる四季を彩っている。また、芸妓や舞妓が京都の伝統行事に参加するなど、その継承の一翼を担っている。
<五花街に伝わる伝統行事の具体例>
- 「始業式」
(祇園甲部、宮川町、先斗町、祇園東/1月7日、上七軒/1月9日) - 新年を迎え、芸妓や舞妓が、正装の黒紋付に、縁起物である稲穂のかんざしをつけ、関係者に挨拶を交し、その年の精進を誓う。また、芸事によく精進した芸妓や舞妓、前年の成績の良いお茶屋などの表彰式も行われる。
- 「お化け」(節分)
- 節分の日、芸妓や舞妓は八坂神社や北野天満宮で舞の奉納や豆まきを行い、その夜には、仮装で笑いを誘い、福を招く。もとは厄払いのための町衆の風習が今も花街に残っている。
- 「八朔」(8月1日)
- 芸妓や舞妓が師匠やお茶屋に日頃の感謝の気持ちを伝える行事。
「八朔」とは「八月朔日(1日)」のこと。農家で古くからあった初穂を恩人などに贈る風習が武家や公家にも広まり、日頃お世話になっている人に贈り物をするようになったとされる。 - 「顔見世総見」(12月初旬)
- 南座での顔見世興行中の5日間、芸妓と舞妓が揃って観劇する。その華やかな光景は、「顔見世」のまねきとともに、京都の師走に彩りを添える。
- 「事始め」(12月13日)
- 正月の準備を始める日。お世話になった方々のもとへ鏡餅を納め、一年の御礼と新年に向けた挨拶をする。
<それぞれの花街に伝わる伝統行事の具体例>
- 「初寄り」(祇園甲部/1月13日)
- 祇園甲部の芸妓と舞妓が師匠宅に集まり、新年の挨拶をするとともに、一年間稽古に励むことを誓う。
- 「かにかくに祭」(祇園甲部/11月8日)
- 祇園を愛した大正・昭和期の歌人・吉井勇を偲ぶ行事
- 「おことうさん・おけら火」(祇園甲部、宮川町、祇園東/大晦日)
- 芸妓と舞妓がお茶屋に「おことうさんどす」と年末の挨拶にまわる。お茶屋は舞妓に小物が入った福玉を渡す。夜には八坂神社に詣で、おけら火をもらう。
昔はたくさんの福玉を持ち歩く舞妓の姿が見られたが、現在は、京都以外の出身者が多くなり、郷里に帰る舞妓が増え、あまり見られなくなっている。
<花街が参加する伝統行事の具体例>
- 「梅花祭」(上七軒/2月25日)
- 北野天満宮の祭神である菅原道真公の命日に行われる祭典。北野天満宮境内にて、上七軒の芸妓と舞妓による野点茶会が行われる。
- 「平安神宮例大祭奉納舞踊」
(祇園甲部、宮川町、先斗町、祇園東/4月16日) - 平安神宮の春の例大祭。16日に舞の奉納が行われる。
- 「観亀神社宵宮祭」(祇園東/5月中旬)
- 観亀稲荷神社の宵宮祭に祇園東の芸妓や舞妓が参加する。
- 「祇園祭・花傘巡行」(祇園甲部、宮川町、先斗町、祇園東/祇園祭)
- 八坂神社の氏子として、7月24日の「花傘巡行」に参加するなど、祭を盛りたてる。
- 「時代祭」(10月22日)
- 時代風俗行列に各花街が交代で参加し、小野小町や清少納言、巴御前などの役を担う。
- 「献茶祭」(上七軒/12月1日)
- 1587年に豊臣秀吉が催した「北野大茶会」にちなんで北野天満宮で行われる大茶会。その副席の一つが上七軒歌舞練場に設けられる。
<現状と課題>
花街の伝統行事には、花街独特のものもあるが、京都の古い伝統を受け継いでいるものもあり、京都の伝統文化の継承に花街が担っている役割は大きい。京都のまちを彩る風物詩を大切に引き継いでいく必要がある。
花街の伝統行事には、花街独特のものもあるが、京都の古い伝統を受け継いでいるものもあり、京都の伝統文化の継承に花街が担っている役割は大きい。京都のまちを彩る風物詩を大切に引き継いでいく必要がある。